介護保険のサービスを受けるには、要介護認定を受けて、要支援または要介護と認定されなければなりません。ここでは、介護保険の基礎知識から介護保険サービスの提供が開始されるまでの流れを簡単にご説明します。
介護保険の被保険者(介護サービスを受ける資格がある人)は、「65歳以上の者(第1号被保険者)」と「40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)」です。これらの人たちが病気などで介護が必要になった場合に、介護保険のサービスを受けることができます。 ただし、第2号被保険者(40?64歳)のサービス利用が認められるのは、末期がんや関節リウマチ、若年性認知症など国が指定する病気(特定疾病と言います)で介護が必要になった場合のみです。
介護保険のサービスを受けるには、市区町村の担当窓口に申請して、要介護認定を受ける必要があります。詳しい手続きは以下の通りです。

1.申請
本人や家族が市区町村の担当窓口で要介護認定の申請をします。申請には「要介護・要支援認定申請書」、「介護保険の保険証」「医療保険の保険証(第2号被保険者の場合のみ)」が必要です。なお、居宅介護支援事業者などに申請の代行を依頼することも可能です。

2.認定調査
要介護認定申請が受理されると、介護が必要な状態であるかどうかを確認するため、市町村の担当職員などが自宅を訪問して、本人と家族に聞き取り調査を行います。これと同時に、普段診療している主治医に、身体の状況についての見解をまとめた意見書を作成してもらいます。

3.要介護認定
要介護認定は2段階で実施されます。一次判定では聞き取り調査の結果をコンピュータで分析して要介護度を機械的に割り出します。二次判定では、保健・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が一次判定の結果や主治医意見書を参考に、要介護度を最終決定します。
要介護度は、要支援1?2と要介護1?5までの7段階で判定されます。もっとも軽いのが要支援1で、要介護5は最重度ということになります。また、介護サービスの必要がない場合は、「非該当」と判定されます。

4.認定結果の通知
要介護認定の結果が記載された認定結果通知書と保険証が届きます。

5.ケアプラン(介護予防ケアプラン)の作成
要支援1、2と判定された人は「介護予防サービス」を要介護1?5の人は「介護サービス」を利用することができます。
介護保険のサービスは、介護保険施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設)に入所する「施設サービス」と、自宅でサービスを受ける「在宅サービス」に大きく分けることができます。
このうち施設サービスを希望する場合(要支援1、2の人は利用できません)は、入所を希望する施設に利用者が直接申し込み、契約を結びます。
在宅サービスを希望する場合は、居宅介護支援事業者にケアプラン(介護予防ケアプラン)の作成を依頼します。これを受けて居宅介護支援事業者の介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者本人の心身の状況や意向を踏まえて、どのサービスをどのくらい(通所や訪問等の回数)利用するかを明記したケアプラン(介護予防ケアプラン)を作成します。

6.サービス開始
ケアプラン(介護予防ケアプラン)に基づいて、在宅介護サービスの提供がスタートします。
在宅サービスには、訪問サービス、通所サービス、短期入所サービスなどがあります。主なサービスは以下の通りです。
訪問サービス/通所サービス/短期入所サービス/地域密着型サービス/生活環境を整えるサービス
マークは、特にサービス充実
■訪問介護
ホームヘルパーが自宅を訪問して身体介護や生活援助を行います。
■訪問入浴介護
介護職員と看護師が移動入浴車で自宅を訪問して入浴介助を行います。
■訪問リハビリテーション
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士によるリハビリテーションを自宅で受けられます。
■訪問看護
訪問看護師が自宅を訪問し、療養上の世話や診療の補助をします。
■居宅療養管理指導
医師、歯科医師、薬剤師、栄養士などが自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行います。
■通所介護(デイサービス)
食事、入浴、排泄などの日常生活上の支援や機能訓練などを日帰りで受けられます。
■通所リハビリテーション(デイケア)
老人保健施設や医療施設などで、日常生活上の支援やリハビリテーションを日帰りで受けられます。
■短期入所生活介護/短期入所療養介護
介護老人福祉施設や医療施設などに短期入所して、日常生活上の支援や機能訓練を受けられます。
■夜間対応型訪問介護
定期巡回や通報による夜間専用の訪問介護が受けられます。
■認知症対応型通所介護
認知症の人を対象にした通所介護(デイサービス)です。
■小規模多機能型居宅介護
通い、泊り、訪問を利用者の選択に応じて組み合わせる多機能サービスです。
■認知症対応型共同生活介護
認知症の人が共同生活する住居で、日常生活上の支援や機能訓練が受けられます。
■福祉用具貸与/特定福祉用具販売
日常生活の自立を助ける福祉用具を借りたり、購入したりすることができます。
■住宅改修費支給
手すりの取り付けや段差解消などの住宅改修費用が支給されます。
利用者がサービス事業者に支払うのは、原則としてかかった費用の1割です。短期入所生活介護などの食費と滞在費(光熱費)、通所介護などの食費については全額利用者の自己負担となります。
介護保険の在宅サービスでは、要介護度ごとに1ヵ月のサービス費用の上限額が定められています。そのためケアプラン作成の際には、この上限額内に収まるようにサービスを組み合わせます。利用者や家族の希望で上限額以上のサービスを受けることも可能ですが、その場合、上限額を超えた部分の費用については全額利用者負担となります。