地域包括ケアシステムの鍵は「統合」 ~慶応義塾大学田中滋先生のお話から~
先月の話になりますが、セントケア創業者の村上会長が私財を投じて設立された財団法人オレンジクロスの設立記念講演会が8月8日に開催されました。同財団は、国が目指す地域包括ケアシステムにむけて、地域ケアの現場との連携による実証型の研究を自らが行うことを目的にしています。
私の長年の親友、悪友?である岡本茂雄セントケア・ホールディング執行役員が同財団の理事長に就任したこともあり、私もその設立記念講演・記念パーティーに参加させていただきました。
さて記念講演では、国の医療介護総合確保推進会議長の慶応義塾大学田中滋名誉教授が、「地域包括ケアシステム構想の展開」というテーマで講演されましたが、そのキーワードは「統合」でした。
(統合の4つの層と次元)
田中先生は、統合には「在宅医療と介護」から始まって、地域づくり・生活提案レベルまで、以下の4つの層があり、
①
在宅医療と介護の統合:重度要介護者
②
生活支援と介護の統合:要支援者と要介護者
③
街づくり・生活拠点:虚弱高齢者
④
地域づくり・生活提案:高齢者・障害者・児童
また、それを実現していくためには、
①
臨床的統合
②
組織的統合
③
システム統合
④ 規範的統合(ビジョン・価値観など)
が必要であると説かれています。
田中先生のお話しを聴いて・・・私は、地域包括ケアシステムを実現するのには、それに関わる組織や専門職が、まずケアや街・地域づくりに対して共通のビジョン・理念・考え方をもち、共感することが出発点であると思います。その上で、ビジョンや考えを実現していく為には、立場が違う各人が理解しあえる共通の「言語」をもつことも重要あり、「各人」の中には、勿論ケアされる本人や家族が含まれます。このことについて、少し具体的にお話ししたいと思います。
(当社ふじみ野市での地域密着型事業取り組み)
当社は、埼玉県ふじみ野市鶴ヶ岡で地域密着型事業であるグループホームとデイサービスを運営しています。運営にあたっては、地域の富家病院や薬局、訪問看護と連携しています。しかし、物理的に距離が近いから連携している、ないしは医師にグループホームに来ていただいているから医療連携ができている、ということにはなりません。
富家病院では、「家庭のような病院=ナラティブホスピタル」(患者様と家族、スタッフ、医師が一緒になってそれぞれの物語を作る)を目指されています。一方、私たちグループホーム・デイサービスは「認知症の人と地域を結ぶ〝ふるさと〟」「生活するお客様と私たちスタッフは〝まちびと(街人・待人)〟」を目指しており、両者の目指す方向、考え方が重なります。また、富家先生の「認知症の方に薬物療法は行わない」の言葉にも共感します。これは立場を超えた「規範的統合」と言えるでしょう。
しかし、目指す方向や理念が重なっているだけでは、臨床や介護の現場は上手く動きません。私たちはセントケア・グループと京浜病院熊谷先生が開発した認知症ケア「熊谷方式三期分類」*を導入し、認知症の方のケアにあたっています。富家先生もこの方式に関心をもち、自ら往診に来ていただいています。三期分類はまさに医師・看護師・薬剤師・介護職、そしてご家族をつなぐ共通言語であり、現場レベルの連携をスムーズなものにしています。これは「臨床的統合」の一つの形です。
このように、当社ふじみ野での取り組みは、田中先生の言う、要介護者(認知症の方)を対象にした「在宅医療と介護」の層の統合であり、また臨床的、規範的の次元の統合と言えます。(正確には統合に向けた挑戦、という段階でしょうか)
今後それを深めていくとともに、私は臨床的統合からシステム統合への発展を期待していますし、更には「医療と介護」を超えた、「地域づくり」「街づくり」層の統合へと発展させていきたい、そのような想いにして下さった田中先生にとても感謝しています!
平尾 雅司





















